パライバの興味深さ!

碓かにあなたの会社は他の私どもの商品に興味を示してくれた会社よりずっと小さいし新しい。
でもあなたのように、どのように私どもの商品を日本で広げていってくれるか、情熱的に語ってくれた人は他のどの会社にもいなかった。
あなたの会社を日本での総代理店にさせてください」。
私はただ茫然。
どう考えてもジョークとしか思えませんでした。
でも私はその後も同じような方法で競争相手を向こうに回してイギリス、フランスの会社、数社と総代理店権を結ぶことに成功したのです。
どこの会社でも私の〝何故あなたの商品を売りたいのか〟という考えがわかりやすいのと、マーケットにどのように浸透させてゆくかの方法論が明確なのが信頼しようと思った要因だと言っていただきました。
でも、「大きなウエアハウス(倉庫のこと)はあるんですよね?」の質問にはただただ冷や汗をかきながらそんなものありもしないのに「ィ、イエス」と言うしかありませんでしたが。
メーカーさんと取引してもらうのは正直大変です。
買いたい商品があっても買うことができなかったリ、つきあい自体を断られそことも、その後、日本でたくさんありました。
どこの誰ともわからない者には自分達が大切に産み、育ててきた商品を扱わせるわけにはいかない、どんないい加減な売り方をされるかわかったものではないと心配されても仕方のないことです。
今、自分がメーカーの立場になったのでよくわかりますが、メーカーさんだって誰にでも「はい、どうそ」って自分の子ども同然の商品を養子に出すわけにはいきませんし、ちゃんと養子縁組先がこの子を可愛がってくれる人か、この子にきちんと光を与えてくれる人か見極めたいと思っています。
ですからあなたがとうしてもある商品に惚れて、その商品を扱いたいのならあなたのすることはたった一つ。
自分はどんなふうにその子を有名人に仕立てあげ大きな価値を与えてあげることが出来るかを情熱を持って相手に伝えることです。
その場合、あなたはきちんと勝算の持てる考えを持って情熱をかけてメーカーさんを説得しなければなりません。
もちろん言ったことには責任を持たなければなりませんし、努力もしなければならないので軽い気持ちでなんかは出来ません。
ただし会社と会社の取引といっても結局は人間同士のつながりです。
あなたという人間を信用させることが出来れば道は開かれるというのが私がこの一六年間で得た結論です。
ちなみに、私はせっかく総代理店に選んでもらったのだから、売上規模はそんなに急にアップとはいかないかもしれないけれど、せめて日本のマーケットの状況レポー卜くらいは真面目につくってそういうことから認めてもらおうと、一生懸命取り組みました。
それもひとえに相手との共通の利益につながるコミュニケーションを欠かさなかったからだと思います。
いつでも、どんな場でも信頼関係は大切ですね。
おかけで海の向こうの会社はますます私を信用してくれて、日本である程度売れるようになったら、横から総代理店を奪おうと画策した会社をはねのけて、私の会社が全てをオリジナル商品に切り替えるようになるまでの四年の間、ずっと総代理店の地位を保つことが出来ました。
こうして数社の日本総代理店というお主産を手に日本に帰ってきて、日本一の大きなトレードショウであるインターナショナルギフトショウに出展することにしました。
いよいよ日本のマーケットに出る時です。
私の選んできた自信の商品はどれも〝大人の女性が見て可愛いと思えるもの〟、〝暮らしを思わず楽しくさせるもの〟この一言にポイントをしぼり実用的なことにもこだわりました。
フリーマーケットで学んだ経験を活かしディスプレイにも気をつけて、コンセプトもきちんと打ち出して、お客様に夢を売るように心がけました。
生活雑貨という言葉もまだ耳に新しい頃です。
私の提案した〝すてきな暮らし″はお客様に広く受け入れられて、まだまともな事務所もなく、スタッフもおらず、臨時で借りただけの小さな部屋は商品で足の踏み場もないような有様でしたが、お客様は一挙に一〇〇店舗くらいになりました。
それからの毎日は電話でのご注文の対応と商品発送に追われる日々。
毎日夜中まで什事をし、そのまま事務所兼倉庫で寝てしまうこともしばしばでした。
それまでの暇で時間だけはたっぷりあったけど、将来に対する展望も見えない中であせっていた時とは打って変わって、毎日忙しく目の前のことをこなすのが精一杯。
でもとっても充実した日々を送っていました。
商品は外国からの白前仕入れだけでは足りなくなり、だんだん日本の商社さんからも商品を譲ってもらってお客様にお届けするようになっていました。
生活雑貨を扱う会社をはじめようと思った時からの夢だったオリジナルの開発商品も手がけるようになり、またそれが爆発的にヒットしました。
こんなこともありまし。
ある日、オリジナルで開発した商品を引きさげて展示会に臨んだ初日、うっかり寝坊して一五分くらい遅刻して会場に到着すると一つだけ電気が点いていないブースが。
でもそのブースの前は黒山の人だかりであり、お客様は注文したくても誰もいないので出来なくてウロウロしていたなんて笑い話もありました。
そんなふうにしてお客様の数もどんどん増えて、事務所は少しずつ大きなところに引越しを繰り返し、スタッフも増えてゆき全てが順調でいたある日、それまで歩いてきた道を振り返って、一歩も前に進めなくなってしまった事件が起こったのです。
これが日々の忙しさに末来を見つめることを怠ってきた私に突然襲いかかってきた現実でした。
何もかも順調だった私は、会社をはじめてから一五年ほどたったある日ふっと目の前に広がっている自分の扱う商品を見て愕然としたのです。
「これは私が扱いたいと思った商品ではない。
私の提案したかった大人の女性から見た可愛い雑貨ではない。
一体いつからこんなことになってしまったんだろう」って。
初めての展示会に出展してからお客様も徐々に増え、それにつれてお客様の要望を一生懸命聞くようになっていました。
「仕入れて欲しい」と言われればできるだけ揃えるように努力してきました。
その時はお客様に喜んでも、見るけれど、そうやっていくうちにだんだん妥協した商品が多くなり、私が本来雑貨屋さんをはじめたいと思った動機にかなうものがどんどん少なくなり、一体私は何をしているのか自分で自分がわからなくなってしまったのです。
当時もたくさんの商品を私なりに再構成してテーマを打ち出しては販売していました。
でもどんなに一生懸命編集を試みてもちょっと違う、私の愛すべきテイストではない、私が欲しいと思っていた、優しくてフェミニンな、大人の女性が可愛いと思えるものではなかったのです。
会社をはじめて五年目。
最初の大きな壁にぶち当たりました。
ろくに準備もせずに思い切りと情熱だけで私の船は大海に出てしまったために、大きなしっぺ返しが待っていたのです。
ちょっと違うと思い出したらとどまることを知りません。
ごまかし、ごまかしやっていることにも自分で自分が許せなくなりました。
全てが順調だったのに、疑問が私の頭をもたげてからというもの、一歩も前に進むことが出来なくなってしまいました。
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